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「かわいい」
直美さんが本棚の上のピンク色のガーベラをみつけた。
スーパーの隣の花屋で買ったものだった。ピンク色のガーベラが直美さんに似合う気がして。
「お花なんて活けてて、ますます男の子の部屋じゃないね」
直美さんがガーベラを活けたコップをテーブルの上に置いて眺めた。
「わかった。彼女だ。彼女が活けていったんでしょ?」
どうしてみんな、僕に彼女の影を見るのか。いないのに。
「のびちゃん、モテそうだよね。背高いし、すらっとしてるから」
「コーヒーと紅茶、どっちがいいですか?」
「コーヒーがいい」
キッチンに立ってインスタントじゃない、ドリップ式のコーヒーを淹れた。
「お砂糖とミルクは?」
「ブラックでいいよ」
直美さんが隣に来た。
「ケーキ焼いて来たんだ。包丁使っていい?」
直美さんが包みを掲げた。
「どうぞ」
シンクの下の扉を開けて、包丁を出した。
「お借りします」
直美さんが持って来た紙皿の上でパウンドケーキを切ってくれた。
プラスチックのフォークも持参してた。
用意のよさに主婦なんだなと感心した。
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