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僕はコーヒーの入ったマグカップを二つ持ち、直美さんはケーキを持って、テーブルのある部屋に行った。
テーブルを挟んで向かい合う。
カフェでは横並びで話していたから、少し緊張した。
「いただきます」
直美さんがコーヒーを口にした。
「美味しいよ」
目が合う。
恥ずかしくてすぐに逸らした。
「直美さんのケーキも美味しいですよ」
パウンドケーキはお世辞じゃなくて本当に美味しかった。普段から作ってる感じがする。
「良かった。久しぶりに作ったから、ちょっと心配だったの」
安心したような顔をして、直美さんもケーキを食べた。
「本当だ。今日は大成功だ。やっぱりのびちゃんの事考えて作ったから上手くいったのかな」
咽た。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
慌ててコーヒーを飲んだ。
のびちゃんの事を考えてって言葉が胸の奥にまだ引っかかってる。
どうしていつも心を揺らす事ばかり言うんだろう。
「DVD借りて来たよ」
直美さんが無邪気な笑みを浮かべて、黒い貸出袋からDVDを取り出した。
「私の好きなやつにした」
DVDは『ドラえもん』の映画だった。しかも昔のドラえもんだ。
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