殺意

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何か怪しい…いや、旦那のコトである。 携帯をポチポチと隠れて打っている。ここ1週間、しかも毎日である。 女の気配を感じさせない旦那で、今までは全く心配していなかったのであるが…。 ある女性誌を読むと、旦那の浮気の兆候の第1位に、携帯をやたらと触るとあった。 まさにソレだ。ゲームやニュースを見ているのとは明らかに違う動き。何やら文章を打っているのである。 浮気相手にラインをしているに違いない。 旦那が風呂に入った。 ヤツは、携帯にロックはかけない主義だ。 「俺の携帯、いつでも触っても見てもイイよ〜」と常日頃言っている。 ライン履歴を見る。ライン履歴のほとんどが、私と子ども達。ヤツに友達は少ない。 まさか、メール? メールを見る。 何とそこには小説が書いてあった。 800文字制限(原稿用紙2枚)の短い小説…ショートショートという分類か? 少し読んでみた。まあまあ、読めない事もない。 画像欄には、応募したコンテストのスクショ(画面コピー)が。 そうか、もうすぐ私の誕生日。 小説コンテストでの賞金で私の誕生日プレゼントを。 疑った自分を責めた。 そして、コンテストの締め切りと発表日をメモした。 期待せず、こっそり結果を見とこう。 誕生日前、コンテストの発表があった。 何と、佳作で1万円を獲得している。 誕生日プレゼントは、財布にしてもらおうかな? 誕生日がきた…何も無い。 誕生日が過ぎても何も無い。 思い切って聞いてみた。 「あなた、この前、偶然、小説コンテスト結果にあなたの名前を見たんだけど」 ヤツは、鼻を膨らませて言った。 「競馬資金が欲しくて、小説応募を探して小説出したら佳作で1万円貰えたけど、貰った日の1レース目で全部失った、ハナ差、ハナ差、馬の鼻分だけの差…惜しかったんよ!」 黙って、携帯を開いた。 そして、私は… 「旦那の悪口小説1万文字」の応募を探していた。
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