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プロローグ
彼女が虹を創る。
「なぁに、あれ」
「はしゃいじゃってバカみたい」
秋晴れの空の下、目的もなくホースで辺り一面水浸しにする彼女は、他の誰にも理解されない。
「死んだ人はみんな虹を渡るんでしょ」
「ピカソもポチも母さまも、みんな虹を渡ったわ」
「虹を渡る時は歩くのかしら、それとも走るの? スキップなんてどうかしら。どうせなら踊りながらだと楽しいわね」
自身もぐしょ濡れになりながら夢見るようにいう彼女は、鼻歌まじりに虹を創り続ける。
「あなたも踊りなさいよ」
無茶を言う彼女に僕は逆らえない。
だから僕は、彼女が創る虹を踊りながら渡るのだ。
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