隠し事

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

隠し事

「ズガン!!」という爆音とともに恵美の後ろからここらへんじゃ、 いやどこに行っても見かけないような大勢の黒い服の男たちが皆、 ピストルを構えていた。しかも恵美に向かって!! あまりにも唐突な出来事だったため、 その中からひと周りでかい男が引き金を引いた。 「へ?」 ダアアン! 恵美が背中から血を出して倒れた。 「うああああぁぁぁ!!!」その瞬間まるでタイムワープでもしたかのように 俺の視界は公園から木製の天井に変わった。 「またゆめか...」俺はそうつぶやき、起き上がった。 障子を開けると近くにいた男たちは皆一斉に 「おはようございます!!」と叫んだ。 「......」そのままうつむきながら歩いていると、ひときわ大きい声で 「組長!!」と叫ぶ男が前方に見えた。顔を上げると あの恵美を撃ったひと周りでかい男が人懐っこく俺に近寄ってきた。 「組長、お体は...」そう、俺は厳しい父が亡くなったのをきっかけに、 普通に生きたいと思った長年の願いをかなえるべく、 やくざのアジトから脱走したのだ。 「さい...」  「へ?」   「うるさい!うるさい!うるさい!!」 そう叫びながら俺は、道路を飛び出て走っていった。 (恵美を殺したのは俺だ...)走りながら俺はずっと頭の中で考えていた。 ふと口を開けるといきなり「いつの間に静岡から東京に着いたんだろお?」 思ってもいない、まるで別人がしゃべっているような言葉が口から出てきた。 これが現実逃避というやつか... 空を見上げそう思った俺は再び前方を見るとあの公園に戻っていた。 いや、そういう幻覚を見ていた。目の前に血を流している恵美、 その後ろでピストルを持っている健一、そしてそれを見ている俺を まるで雲から見ているかのような光景だった。 「あぁぁあぁぁぁあぁ!!」そう叫んで我に返った俺は決心した。 自分で組をつぶして自分も死ぬと... 俺に巻き込まれて死んだ恵美のように...
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!