フェチに佇む。

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「課長!ご、ごめんなさい……」 「いいよ。帰ってゆっくり寝てね。お疲れ様」 ニッコリ笑ってみせてから立ち去ろうとする私の腕を織田君が掴みます。 見ると、捲れ上がった逞しい腕から血管が浮き出ていてーーーう、眩し過ぎて見てらなくて思わず目を背けます。 彼は慌てたように見えました。 私の腕を離して、頭を掻きました。 「あ、すみません」 「う、ううん」 流れる微妙な空気ーーーううむ、どうしよう。 「あの…課長、夕食まだですよね?僕、奢ります」 「えっ、いいよ、大丈夫」 「お礼したいから。課長とか部下とか関係無く、一人の男として誘ってます」 「へ?」 思わず変な声が出たら、織田君は涙袋を弛ませてニコッと微笑みました。 ああ、いいなあ、尖った上唇に誘われた… あ、待てよ、私。 そうか、これは、夢想なのだ。 仕事中に寝ていたのは私の方なのですね、きっと。 サッサと起きなければとブンブン首を振りました。 「この近くに夜通しやってるイタリアン見つけたんです。課長をずっと誘ってみたくて。行きましょう?」 そう言って織田君は私の手をギュっと握ったのです。 触れあったそこが急速に熱を帯びてゆく。 これは、現実に起きているコト? それに気が付いた私は今きっと、 世界一、惚けた顔をしてますね。 そんな私なのでやっぱり、このお話はなかったことにしていただけませんか? はい、そうです。 織田君の事が、今とてもとても気になって仕方ありません。なので、彼氏募集は見送ろうと思います。 本当にごめんなさい。 もう少しこの状況を楽しみながら、社会の荒波も楽しみながら乗り越えて行こうと思っております。 《完結》 年下フェチ
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