デート

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「どうぞ。もうクリスのものよ」 紙袋から大きな手のひらに転がり出てきたのは、トップでXの形にクロスするシルバーの指輪。まだ若いし、こういうゴツいアクセサリーは好きなんじゃないかなと思ったのだ。案の定、 「ええっ、すげえカッコいい。これ、本当にもらっちゃって良いんですか? っていうか、俺、何にも返せないです」 と、興奮した様子だ。 返せない、とクリスは言うけれど、紗子はもう彼からもらっている。こんなに穏やかに笑っていられるのは、クリスが隣にいるからだ。浜嶋に向かう気持ちとも違う、勿論和久田に向く気持ちとも違う、穏やかな気持ち。それを教えてくれただけで充分なのだ。 嵌めてもいいですか、と聞かれたので、エエよと応える。指輪はクリスの中指にするりと収まった。手を空にかざして指輪を見ているクリスが笑う。 「カッコいい…」 「似合うわね。良かった」 「ホントに? 似合ってますか?」 クリスが紗子を見て言うので、似合ってるわよ、と言うと、クリスがにこお、と笑って、宝物にしよ、と呟いた。 「言うとくけど、安ものよ?」 「違うんですよ。紗子さんからもらったって言うのが宝物なんです」 ほっぺたのてっぺんを紅潮させて言うクリスが愛らしい。浮足立ったクリスを紗子は早足で追った。
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