その気になんて

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* また和久田と会わない日が続いた。紗子も積極的に和久田を探してないし、和久田もどうやら忙しいらしくて紗子どころじゃないんだろう。お互い働いていれば、そういうことだってある。でも、紗子はどこか空虚な気持ちで毎日を過ごしていた。 胸の真ん中が、ぽっかりと空いてしまったよう。空洞になった其処には、きっと和久田が座る筈だったのに上手くいかない。 和久田がどういうつもりで居るのか、聞いてみたいけど聞くのが怖い。初めて実った恋を自ら壊すようなことはしたくなかった。でも現状はそれに似ているような気がする。 胸の中がじくじくする。恋ってこんな嫌な気持ちになるものだったのかな。それだったら、憧れたままでどきどきと胸を高鳴らせていたかった。和久田と想いを交わしてから、良い思い出がまるでない。 紗子は俯く日が増えていた。元気がないことは浜嶋にも心配されてしまって、でも浜嶋に心配されたら以前はもっとときめきがあった筈なのに、今はそれも影を潜めた。 ……こうやって、想いって色褪せていくんだな。それは、和久田に対して持ったあの想いも? それは少し、寂しい気がした……。
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