シャンプー

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「な、何?そのリアクション。面白い。あはは。」 彼女は口に手を当ててコロコロ笑った。 公園中央部に位置する噴水広場。カップル達の聖地と呼ばれる場所。 突然笑顔の彼女のバックで水の柱が立ち昇った。この公園の噴水は規則的に強弱をつけながら次々と踊るように姿を現す。青空に向かって飛び出した水柱からは小さな飛沫がキラキラと彼女に向かって降り注ぐ。 「あのね。友達が勤めている美容院なんだけど私にカットモデルをやって欲しいんだって。何とね、シャンプー、カット、セット代無料だよ!」 彼女は口に当てていた手を今度は腰に当てて ドヤ顔を始めた。 「モデルになるんだからそんなの当たり前だろ?威張る事じゃない。」 俺の心を知らずに見せる無邪気な笑顔。 むくりと芽生えた理不尽なイラつきは無意識にトゲのある言葉を彼女に向けてしまう。 「ロングからショートへと劇的変化のモデルを探してるんだって。私もずっとこの髪型だし、、秋だしそろそろイメチェンもいいよね!」 「今の髪型が一番似合ってる。ショートはそんな丸顔には絶対似合わない。慣れないことはするべきではないな。絶対失敗する。まあ鏡の前で泣きべそをかいて何ヶ月も過ごす覚悟があるなら別だけど。」 「何よ、その言い方。感じ悪いわ。絶対、絶対、って。何で決めつけるのよ!」 「俺は親切で言ってやっているんだ。」 ......切らないで欲しい。 どうしてその一言は俺の口から素直に出ないのだろうか、、。
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