君を愛する三つの理由

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君を愛する三つの理由

 木村空歌(きむらそらか)。それが、僕がひっそり片思いしている小学校のクラスメートの女の子の名前だ。  髪が長くてとっても美人。でも僕が彼女を一番好きな理由はそこじゃない。  物憂げに窓の向こうを見ている姿が綺麗。でも僕が彼女の一番好きな表情はそれじゃない。 「よいしょ」  教室の窓のベランダでは、チューリップの鉢を置いてみんなで育てている。悪ガキばかりのクラスで、うっかり水をあげるのを忘れてしまう生徒も多い中、彼女は絶対に水をあげるのを忘れたことがない。いっつも、ピンクの蕾をつけたチューリップの根元に触らないように気をつけながら、ジョウロで一生懸命お水をあげている。 「がんばってね。綺麗なお花を咲かせてね」  そうやってお花に話しかけている時、彼女は最高に素敵な笑顔を見せてくれるのだ。自分ではない誰かの幸せを願って笑う時、人は最高に綺麗な顔をする。僕は彼女を見ていてそれを知ったのである。何故なら、誰かの幸せを願っている時、その人も最高に幸せな気分になれるからなのだろう。僕は、彼女のその顔が大好きだ。いつも、一秒でも長い時間、彼女には笑っていて欲しいと思っている。  残念ながら、普段の彼女は殆ど笑わない。授業中もや休み時間も、どこかむすっとした無表情で佇んでいることが殆どである。一体何故なのだろう、と僕はいつも思っていた。確かに美人は美人だけれど、彼女は笑っていた方がずっと魅力的であるはずなのに。休み時間はいつも本を読んでいるけれど、僕は知っている。彼女はそんなに読書が好きなわけではない。だって、読んでいる本のページは全然進んでいかないのだから。一人でいたいから、一人でいる口実を作るために本を出しているだけなのだろう。
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