いる、いる、いる。

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いる、いる、いる。

 一人で溜め込んでおくの限界だから、悪いけどここで書かせてもらうことにする。このコミュでは怖い話とかも全然OKな雰囲気だし、別にいいよな?  コロナの影響で、最近需要が増えてるのが昼メシとかを配達する仕事だ。ウーバーイーツみたいなの、って言えばわかる?携帯で依頼受けて、ファミレスとかのお持ち帰りのメニューを自転車とかで取りに行って配達する仕事。一件ごとの料金が設定されていて、いっぱいこなせばこなすほど配達員にお金が入る仕組みってなわけだ。  俺もその仕事を始めたってわけ。なんせ元々バイトしてたケーキ屋が、コロナの影響で潰れちゃったもんだからさ。新しいバイト探してコレに行き着いたの。やっぱりこれから先需要も伸びる一方だし。何より、“やればやっただけお金が儲かる”って仕事は、やる気に繋がるから俺向きだと思ったんだよな。  俺が仕事を受ける出前の会社の名前は――まあこれはちょっと体面悪いから伏せておくことにする。とりあえずA社ってことにしとくか。仕組みは多分ウーバーイーツ系と殆ど変わらないんだと思う。地元で自転車乗って待機してて、アプリに連絡があったらそこの店に向かって配達する、みたいな。いつでも好きな時間に始められるし、好きな時間にやめられる。ついでに運動不足も解消できる。  俺は時間が余ったら、いつも同じエリアで待機してた。大学の講義が終わった後は毎日だ。特にサークルもやってないし、悲しいかなカノジョなんて素敵なものもいなかったわけでさ。 「あ、また来た……」  B駅前で待機するのは、ひとえにこの近辺が一番依頼が入ってきやすいことがわかってるからなんだけど。  一件、実は奇妙な家がある。  夕方駅前で待ってると、ほぼ毎日のようにその家は依頼をかけてくるんだ。同じ弁当屋の配達依頼。場所は、B駅を線路沿いに西の方向にちょっと行ったあたりの一戸建て。全然遠くはない。
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