いる、いる、いる。

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 実はこの秘密の一端、俺はひょんなことから知ってしまうことになる。  その日も俺は、B駅周辺で待機していて、配達の依頼が入るのを待っていた。その日は件の家より、その家の隣の家からの依頼が先に入ったのでそっちに行くことにしたんだよな。ちなみに、頼まれたのはファミレスのうな重定食。聞いて驚け、なんと五千円の超高級弁当だ!おのれ俺だって最近うな重食べてないのに、なんと贅沢な――と心の中で歯ぎしりをしながら、ファミレスでほかほかの弁当を受け取ってその家に向かったわけ。  隣の家、というのは正確には一戸建てじゃない。マンションの五階だ。俺はオートロックのマンションの一階でチャイムを鳴らして自動ドアを開けさせて貰うと、そのまま依頼されたお宅まで弁当を届けた。中から出てきたのはいかにもお金持ちそうなマダムだった。まあ、このマンションそのものがピカピカの新築だし高級そうだし、全然不自然なことじゃないんだけども――ってこれはいい。本筋に関係ないし。  問題は。俺がゆるゆると階段を降りてマンションから出て行こうとした時なんだよ。本当に、後悔してる。何で行きと同じくエレベーターを使わなかったんだ。階段で降りるにしても、外側に面した西階段じゃなく東の内階段を使えば良かったじゃないかってな。  なんとなく予想がつくだろ?五階からの高さだとな、いくら高い塀で囲っていても――見えるんだよ、隣の家の庭が。  俺はそれに気づいて、思わずそこを覗きこんじまったんだ。そして知った。 ――うっげ、なんだあの色……。  “例の家”の庭は、俺が予想していた通りほとんどが巨大な沼になっていた。池、なんて生易しいものじゃない。庭の大半を、ドロドロとした黒い水なのか泥なのかよくわからないものが覆い尽くしてるんだよな。とても庭としてまともな機能を果たしているとは思えない。そりゃ、腐ったみたいな臭いもするわと思ったもんだ。  ただ、正直いっていくらなんでも色がおかしいんだよ。ほら、泥とかでも、正確には真っ黒じゃないだろ?黒がかった茶色とかだろ?ところがその家の庭の沼は、文字通り“墨汁流しこんだみたいな真っ黒”なんだよな。庭にタールでも撒いてんのか、って思うレベル。なんだありゃ、と俺は思わずまじまじと観察しちまってさ。
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