いる、いる、いる。

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 案の定、担当の人からはものすごい剣幕で叱られた。マンションの上からなら覗けてしまうっていうのはお互い盲点であったようなので、そこは少々理不尽ではあるが。 『……一つ訊くけど。顔が浮かんできたところまでなんだな?その顔と、目は合わせてないんだな?』 「は、はい……」 『なら、ギリギリセーフか。……お前、もう例の家に配達に行くな。ていうか、B駅周辺で配達をするのもやめろ。それがお前のためだ。わかったな?』 「そ、それはいいんですけど!あの顔はなんなんですか、あの家はなんなんですか!会社は、あそこは、何を隠してるんですか!?」  俺が矢継ぎ早に尋ねると、担当の人は少しばかり沈黙して、“俺もよくは知らない”って返してきたんだ。ただ。 『あの家がやばいものを“飼ってる”のは知ってる。過去に“喰われた”奴もいたらしいってことは。……それ以上は何もわからない。ただ、庭を覗くと、奴は視線を感じて浮かんでくるってことらしい。目を合わせたら何もかも終わりなんだとも。……それだけだ、俺が知ってるのは。いいか、とにかく仕事でも仕事外でももうあの家には近づくな。わかったな?』  消化不良、と言われるかもしれないけど。結局そのまま、あの家にあったモノの正体はわからずじまいだ。  けど、いつもどっしりと構えている印象だった担当さんが死ぬ気で慌てていたことと、俺が途方もない悪寒を感じたってことだけは明記しておく。多分あそこにいたのは、ただの“悪霊”とか、そんな言葉で図れるようなものじゃなかったのだろう。もしかしたらあのお弁当も、なんからの供物とか、そういう使い道をされていたのかもしれない。今となっては何一つわからないけれど。  俺はその日を境に、B駅周辺で仕事をするのをやめた。オフの時でも、あの家の付近には絶対に近寄らないことにしているから、今あそこはどうなっているのかは全くわからない。  何にせよ、俺と同じようなバイトをしてる奴は少なくないだろうし――弁当屋で毎日、五人前の同じ唐揚げ弁当ばっかり頼む一戸建があったらさ。まあ、気をつけてくれよ。  本当に怖いものや不気味なものっていうのは、何処に隠れているかわかったもんじゃないんだからさ。
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