中納言邸

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三角は刃の下で平然と話を続けます。 「ところでお主、すず姫をどうする? 理由はどうあれ、鬼と手を結んだ女だ。わしを切ったあと、姫も切るつもりか」 若侍は、「あっ」と声を漏らしました。 「まさかお前、すず姫に()れたのか」 もしや鬼も彼と同じく、(なり)のよい胸に惚れ込んだのかも知れません。 「違います。私が三角様を(した)っているのです」 すず姫は立ちあがり、鬼の腕に寄り添いました。 「太く固く、筋の浮かんだ腕に」 鬼の腕をさすりながら、潤んだ目で顔を見上げています。 「わしも困っておる。まことに好かれてしまうと、食うこともできぬようだ」 「鬼の言うことなど、にわかに信じがたい」 「好いた相手が嫌がることはしないもの。……お主にも、分かるだろう」 若侍は胸を突かれた心持がして、太刀を下ろしました。 「姫に惚れたゆえ、もう人は食わぬと申すのだな。うむ、それならば」 若侍には分かるのです。 彼もまたすず姫の、もぎ取りたくなるほどな胸に惚れていました。
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