鯖街道

4/5
前へ
/12ページ
次へ
「私は虫に姿を変えられて、市女笠(いちめがさ)の内に囚われました。三角は兄に化けた2匹とともに京へ上って、わが家の人々を食らうつもりです。私は……最後に食らうと言われました」 「鬼の考えそうなことよ。なるほど俺が遣わされたのは、姫を救い、鬼を退治()るためか」 若侍は納得がいったと、うなずきます。 「姫、よくぞ逃げてこられた。ところで鬼どもは今、どうしておる」 「3匹とも、寝入っております。私はそろそろ戻らないと」 「ならば人に化けている今のうち、寝首を()いてしまおう」 若侍が太刀を手にしますと、姫は声を上げました。 「それでは私にかけられた変身(かわりみ)の術が解けません。ただ今この姿でいられるのは、お月さまの光を浴びているからなのです」 「だが三角が姫を元に戻すのは、京で人を喰うた後のこと。そうはさせられん」 「たとえ相手が鬼でも殺生(せっしょう)は、み仏の道に背きます。お願いでございます。あの者どもを殺さず、なんとか術を解いてくださいませ」 姫が胸に飛び込んでくると、やわらかな乳房が押しつけられました。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加