中納言邸

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中納言邸

京に入った一行は、中納言の邸にたどり着きました。 まだ日は高く、西に傾き始めたばかりです。 門をくぐると家人(けにん)が縄をかまえ、庭の築山(つきやま)では武士数人が弓をつがえ、待ち受けておりました。 若侍が、「鬼どもを捕らえよ」と声を張り上げようとした、寸前のことです。 すず姫がいきなり、悲鳴を上げながら彼の胸元に飛び込んできました。 「あれえ、お助けくださいまし。そこのふたりは人に化けた鬼めらにございます。とっちめて下さいませ」 若侍が弓弦(ゆんづる)の鳴る音に驚いて、気を取り戻した時にはもう手遅れでした。 姫の声に惑わされた武士どもは手はずを忘れ、矢を射かけていたのです。 2匹の鬼は変化(へんげ)をといて暴れましたが、すぐに縄で絡めとられました。 「二度と人を襲わぬように、熊野の誓詞(せいし)をとっておけ」 若侍の声に、家人は腕まくりをして鬼たちを懲らしめにかかりました。
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