中納言邸

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若侍は姫に化けた、鬼の三角を突き飛ばします。 鬼は(ひざまず)いて許しを請いました。 「ご容赦を。隠し事をしていたのには、がございます」 「ならば先ずは、すず姫を元の姿に戻すべし」 若侍、すらりと太刀を抜きはなち、切っ先を首にぴたりと当てました。 「なにをおっしゃります。私がでございます」 「嘘をつくな。昨夜、ほんものの姫が湯殿にあらわれて、すべてを語ってくれたぞ」 すず姫は顔を上げました。 頬を朱に染め、目を怒らせています。 「殿方の湯殿に入るなど、そんな(たわ)けはいたしません。あなた様こそ、ふしだらな夢でも見たのではありませんか」 「馬鹿げたことを言う。それでは兄に化けていた2匹の鬼については、どうじゃ」 「勘ちがいだ。お前が刃を向けている者こそ、まことのすず姫よ」 野太い声とともに、鈴虫が1匹、姫の髪から庭に跳び下りました。 「昨夜(ゆうべ)、お主が見た姫こそ、わしの変化だ」 鈴虫はみるみる姿を変え、すず姫の姿となりました。
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