口寄せの巫女

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… 「お”お”えっふん! えぇ、御霊(みたま)入りました」 「本当に母さんなのか…!?」 屏風の向こうでは老婆が咳払いをし、 トランス状態に陥る。絵世院板子の似非降霊術開始だ! 「母さん、何で病気の事を家族の誰にも話してくれなかったんだ!? 実家の家業を継がず、葬儀にも顔を出さなかった兄貴じゃなく 遺産は次男(オレ)に渡すと言ってくれ!!」 依頼人の胃酸星痔難(いさんほしじなん)は板子にすがり付き、凍結中の銀行通帳のパスワードを聞き出そうと躍起になっている。 「なあ、一言で良いんだ! 全て次男に引き渡すと言ってくれ!」 痔難はテープレコーダーを板子に向ける。 「胃酸星様、法律により遺言は本人による直筆しか認められてはおりませんよ。」 見かねた招維持面子が屏風を開いて現れ、 つぶさに助け舟を差し出した。 「ああ、痔難や… お前達兄弟はワシが腹を痛めて産んだ子供… 遺産の事なんかで争うのは辞めて、 仲良く生きておくれ…」 老婆は嗄れた声で懇願する。 「うわああああああん!! お母さああああああん!!」 痔難は老婆の胸にすがり付きわんわん泣いた。
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