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その93.降り注ぐ光
「光を根源とする神々よ。その光を衛星モーントに向かいて解き
放て!!。」
私は思わず叫んだ。いや、正確に言うと、大陸神ユーラントが世界中の
神に語り掛けた、と言ったほうが早いだろう。目を閉じた私の脳裏に
太陽神ラーにヒヒポテ、光の女神ヴァイナスが反応する姿が写った。
三体の神は向きを変え、モーントの方角へと光を放ち始めた。目を閉じたままの私の心の瞳にモーントが反射した光を放つ。
光は強くなったのか、赤かったモーントは少しずつ白い色に戻って
いく。
やがて全ての光を受けたモーントは白く輝きだし、その反射した光を
今度は大東海に落としていく。「やれるか!?。」
闇の黒い霧は少しずつ変化を見せ始める。「頼む・・・持ってくれよ。」
私は祈るような気持ちで呟いた。やがて、光は帯になり、今度は邪神
ヴァルタヴルカンを包んでいく。
ヴァルタヴルカンは雄叫びを上げる。私は目を開け、ヴァルタ
ヴルカンを見た。
「苦しんでいる、のか?。」
光は少しずつ強くなり、辺りの様子が見え始めてきた。
「サント・マルスの国の王よ。力を解き放て。」
どうやったらいいのか分からないので、私は目を閉じ、体からオーラを
だすイメージを思い描いた。その力に反応したのか、光は更に力を
増した。
「いける・・・いけるぞ!!。」
「本当に・・・世界は救われるのか・・・。」
隠れ家でテレビの中継を見つめていたジトゥマ・バヤの私設軍は息を
呑んだ。
「我が聖神の力の賜物だろう。守護神アッサーラの祈りが世界を
救うのだ。」
キエリアのスプートニク宇宙科学局では、急遽帰還した宇宙開発の
飛行士達が、テレビでの中継に釘付けになっている。
「闇の力に打ち勝つには、我々の生命力が必要だと言うから還って
来たんだ。これで世界が救われなければ一巻の終わりだ。」
アルデキアの王子アルージャ・ナムーラは民衆と大勢のテレビカメラの前に立って演説をしている。
「祈ろう!!。我等が生き抜く為。」
狙撃されるかもしれない恐怖も忘れ、ナムーラ王子は手を挙げ、
アッサーラと惑星エーアデに祈りを捧げている。
神々が発する光を反射し、モーントはその光を海面に落としている。
「私の力をお使い下さい。」
海の女神メルクーアの声だ。海は星の光も反射し、大東海も光り始めて
いる。光の帯を振りほどこうともがくヴァルタヴルカンは帯の隙間から
黒い霧を噴出した。そして実体化した身体をくねらせ、帯の隙間から
這い出る。それを阻止すべく光はヴァルタヴルカンを包み込む。
大陸神の力を抑えきれず何度か気を失いそうになる。その度に娘の事を
思い出し、精神力を集中させる。「ま・・・まだか・・・。」恐らく
この激しい戦いで、各国の守護神達の精神力は持ってもあと僅かだろう。
「ここで気を抜くわけにはいかぬ。」
もう自分の声なのかユーラントの声なのか区別がつかなくなってきて
いる。もっと、もっと力が欲しい・・・、世界を、この母なる星を
救う為。
苦しいのかヴァルタヴルカンの雄叫びが続く。踏ん張った脚に力を
込め、もう一度精神力を集中させる。「あれは・・・。」
東の空から一筋の光が強く発せられ始めた。
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