サント・マルスと大陸の覇王 巻の9

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その94.夜明け  永遠とも思われる時間が流れ、私ははっと気付いた。 「皆さん、無事か!?。」 そう言いながら辺りを見回す。どうやらサトウ氏もカズマ青年もグェン 青年も気を失って いたらしく、私が声を掛けると意識を取り戻した。 「我々は・・・眠っていたのか?。・・・そうだ、せ、世界はどう なった?。」  いつの間にか夜は明け始め、水平線上に昇り始めた太陽が見える。 「・・・助かったのか?。世界は・・・救われたのか?。」 「分かりません。・・・けど。」 私は空を見上げた。サトウ氏も一緒に空を見上げる。いつの間にか イブリスもヴァルタヴルカンも消えている。 「サント・マルスは!?。」 私は握ったままの右手の掌を広げた。  宝玉は光を失っている。「サント・マルス!!。」そう叫んだ。すると宝玉は砂のようになり、掌から零れ落ちた。  私は震える手で砂を摘もうとしたが、触れる側から融ける様に消えていった。 信じられない。そう思いながらこの光景を見つめた。もう何も考えら れない。胸が張り裂けそうになり、必死で涙を堪えた。 「永きに亘り、母国を守ってきた守護神が・・・。」思わず口にした。 「どうなったのです!?。」 青ざめた表情で尋ねるサトウ氏だが、全てを知りながら信じたくないと いう表情を浮かべている。もう私は何も言えなかった。サトウ氏も何も 言わなかった。
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