サント・マルスと大陸の覇王 巻の9

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その85.エイジャンの民族  惑星エーアデの導きによって私は出発した。惑星エーアデの話と テレビの報道でその時を迎えた私は、サント・マルスと共に一路イス パニアのヴァレンシア州へと向かった。  国境検問所で出入国手続きをする。どうやら例外は認められない らしく、入国審査には少々時間が掛かった。ようやっと手続きを済ませ、アルメニスタンに入国した。 検問所を出ると神々しい雰囲気に気付き、空を見上げた。 「待っていたぞ。異大陸の神よ。」 金色のオーラを纏った生命体が空中から我々を見下ろしている。かと 思うと、地上に降り、話しかけて来た。目の前に現われた異大陸の神に 私の緊張感は高まる。果たして私の思いに、いや、惑星エーアデの思いに答えてくれるのか。 「我が名はサガルマータ。エーアデの屋根と呼ばれしこの天巖山脈を 守護するもの。大陸神ユーラントと一国の守護神サント・マルスよ。 初めてお目にかかるな。」 「宜しくお願いします。」 私が恐縮したので驚いたのか、サガルマータは少し面食らったようだ。 「驚いたな。大陸神というと我々守護神より格が高い神。そなた、根底はやはり人間であるという事か。」  サガルマータが微笑んだので私の緊張が少し解れた。 「時間は無い。急ぐぞ。」 サガルマータは私の周囲に金色の輪を描き、印を結んだ。一瞬にして 辺りが見えなくなったかと思うと、辺りの風景はすっかり変わっていた。「ここは・・・?。」 「ウドヒ砂漠の東のはずれ、デヴギリ山の登山口だ。ここからデヴギリ 山の中腹の集落サガル村にて指導者ラサ・ポタラは瞑想中だ。」 サガル村。確かうろ覚えの記憶だったが天界に一番近い村と言われていた村だったはず。けど、そんな時に村を訪れて瞑想の邪魔にならない のか?。  辺りを見るとテレビカメラや報道記者達が集まっていて、他の登山者や修験者らが迷惑そうな顔をして見ている。記者達は私の姿を見つけると 一斉に近づいてきてカメラを回し始めた。昔、パパラッチに追い掛け 回された事を思い出し、戸惑った。確かに異国の神と異国の人間の ツーショットなど滅多にお目にかかれないだろうが、この白熱ぶりは 何とかならぬものなのだろうか。余りにも騒がしいので流石のサガル マータも不愉快に思ったらしく、難しい顔をして私の回りに結界をはり、記者達を遠ざけた。  そして再び印を結ぶと、水蒸気のようなものが白い塊になって 集まった。 「さあ、これに乗るがいい。一気に行くぞ。」 私は恐る恐る塊に足を乗せた。ふわふわした感覚はあるものの意外に安定している。サガルマータもそれに乗り、印を結んだ。 「・・・飛んだ・・・のか?。」 私達を乗せた塊は凄いスピードであっという間にデヴギリ山の中腹まで 飛んできた。  民族衣装に身を包んだ数人の人物が我々を出迎えた。その中に私に テレビでメッセージを送ってきたラサ・ポタラの姿もあった。  村内は都会の喧騒を避け、ひっそりと暮らしていた・・・と思いきや、登山者や巡礼の人々の為の施設もあってかなりにぎやかだ。ネットで 調べた時にはデヴギリ山を始めとする天巖山脈を越えるにはこの村の 寺院でお参りをするのが慣わしだそうだ。それに従い私は寺院に入り、 一緒にやってきたサガルマータに祈りを捧げた。  頭の中で色々な声が響く。耳を研ぎ澄まして聞いていると、それは メリアナの女神ヒヒポテだったり、ヴルドーニュのヴルドーだったり、 キエリアのキエリャフ・スィニエークだったり、メセトハプラのラー だったり、その他知らない声も混じって聞こえる。アルデキアの アッサーラと名乗っていたが。キンダーマルスもヴァイナスも セルデゥスも、海の女神メルクーアも皆、この惑星エーアデを救う為、 気持ちを一つにしようとしている、この惑星の最後の大陸神の記憶を持つ私を皆が信頼してくれる。  私は再び出発する為、立ち上がった。
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