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刺身、天ぷら、煮物……南雲の頼んだ一品料理がテーブルに並べられる。
どれも品良く盛り付けられ、見ているだけでも美味しいということがわかり、愛宕は喉を鳴らした。
「冷めないうちにどうぞ」
にこにことお皿を差し出されて、愛宕は躊躇いながらも箸をつける。
見た目どおり、上品な味だった。
「うわぁ、美味しい……」
思わず言葉がこぼれ落ちる。
ゆっくり咀嚼しながら、愛宕は南雲を見た。
「今度は真呼も連れて三人で来ましょう。メニューにはないけど、ポテトフライも頼めば作ってくれるのよ」
愛宕が眠ったままのシグマに引け目を感じないよう、南雲は柔らかい笑顔で提案する。
「室長……」
「そのためにも、この事件をはやく解決しないとだわ。あの衣笠先生に司法解剖を頼むなら、何かしらの進展はあるはずだし、前向きに考えましょう」
愛宕は南雲の口からでた衣笠の名前を聞き、奥多摩で会った彼女のことを思い出す。
雪のように白い長髪、身長も女性にしては高い方だろう。
「……お姫様みたいだったな」
「お姫様?」
ぽつりと愛宕が溢した言葉に、南雲が聞き返す。
「魔女というより、お姫様っぽいなって。衣笠先生、あんなに綺麗なのに」
流れる白髪も、真っ赤なルージュも愛宕にとって物語のお姫様のように感じられた。
もっとも、出会ったときは緊張でそんなことを思っている暇はなかったのだが。
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