MIRROR 《ミラー》

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 連続暴行事件が起きるきっかけとなったいじめ代行アプリの作者、カイ。  彼はシグマをライバル視していたようだが、二人の実力差は素人の愛宕がみても大きかった。 「真呼自身が否定も肯定もしなかったというのも、未だに拘束が続いている理由のひとつなのだけど」  嫌疑をかけられて、取り調べを受けたシグマは何も語らなかったらしい。  彼女の性格なら、何かしらのアクションがあったと思う愛宕だが、当時のことを何も知らないため口を挟めなかった。 「まあ、愛宕ちゃんにならそのうち真呼が自分で話すと思うから……私の話はこれで終わり。付き合ってもらったし、何でも好きなもの頼んでいいわよ」  南雲は黙ってしまった愛宕に手書きのメニューを差し出す。  お薦めの一品メニューが書かれていた。 「室長……」  渡されたメニューを見て愛宕が真剣そうな顔をする。 「このメニュー、値段が書かれてないです」  出来るだけ安いものを頼もうとした愛宕だったが、メニューには料理の名前と説明だけで金額は書かれていない。 「この店に誘ったのは私なんだから、ご馳走するわよ? 好きなものを頼んでちょうだい」  にこにこと勧めてくる上司に愛宕は戸惑う。  そもそも、料亭のような店に馴れていないのだ。 「室長のお薦めで……」  迷いながらも愛宕は上司に丸投げした。  それを聞いた南雲は少し悩んだあと幾つかの料理を注文した。
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