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今回、シグマが調べるように頼まれたのは、件の自殺コミュニティについてだ。
既にホームページは閉鎖され、コミュニティ内でどういうやり取りがされていたのか記録も消されてしまっている。
その復元も含め、失踪者たちの行き先を探すのがシグマに与えられた仕事だった。
「何でボクがそんな面倒なことをしなくちゃならないのさ。無能な警察の尻拭いみたいな仕事なんて御免だね」
捜査協力の話を持ってきた南雲に、シグマは嫌味たっぷりの拒否を返した。
上司にも傲慢な態度をとるシグマだが、愛宕がいないからだ。
「真呼……私ね、愛宕ちゃんに『あなたが来るまでに真呼が全部調べてくれるわ』って言っちゃったの」
「は?」
「だから、愛宕」
愛宕の名前が出た途端、シグマの顔色が変わった。
彼女にとって愛宕は、シグマとしての自分を初めて認めてくれた存在でなのだ。
視界を塞いでいる特殊ゴーグルを外し、パソコンに向かう。
「速攻で終わらせる」
言うが早いか、キーボードを高速で打鍵する。
パソコンの画面は目まぐるしく変わり、自殺サイトのコミュニティ――掲示板の画面が表示された。
「室長、見てよ」
シグマに言われ、南雲はパソコンの画面を覗き込む。
そこには、自殺志願者たちの嘆きが書き綴られていた。
「集まって自殺する、という感じじゃなさそうね」
掲示板の書き込みを一つずつ確認し、南雲は意見を口にする。
学校に関するものばかりであることから、コミュニティ内に学生が多いことが見てとれた。
「ボクには理解できない」
ぽつりとシグマがこぼす。
彼女は自分に絶対的な自信を持っているため、自殺とは縁遠いのだ。
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