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自己嫌悪も自己否定もしたことがないシグマには、書き込みの内容――同じ年頃の人間の悩みがわからない。
「……ん、こいつかな。色んなハンネをつかって自殺志願者と接触している」
複数のハンドルネームをピックアップするシグマ。
「IPアドレスと文章の癖で選別したから、別人の可能性は殆どないと思うけど」
言いながら内容をコピーし、メールに添付してサイバー犯罪対策課へと送付する。
更に打鍵が続き、IPアドレス――ネット接続電子機器の個別番号から、接続先を割り出した。
「……中学校だ」
とある都立中学校の名前が出てくる。
学校に入れる人間は限られているため、学校関係者――生徒もしくは教師が自殺志願者たちと接触している可能性が高い。
「学校はちょっと厄介ね。一旦そこでストップして。先に上の許可をとった方がいいわ」
学校のサーバーにアクセスして、掲示板の投稿があった日時に使われていた該当パソコンのデータから、使っていた人物のIDを特定することはシグマにとって朝飯前だ。
しかし、下手に捜査を進めれば彼女の権限が剥奪される可能性がある。
学校という場所はデリケートだ。南雲はそれを理解し、シグマにストップをかけた。
「じゃあボクは消されたデータの復元を進めるよ」
投稿者が自ら削除したデータの残骸を集め、内容の復元をしていく。
いじめや家族との不仲といった自殺を望む理由など、個人が特定できそうなものが消されているようだ。
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