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静かな室内に打鍵の音が響く。
先程まで、やる気がなさそうにしていたシグマだったが、スイッチが入ったように真剣にデータを集めていた。
「緒方愛宕、戻りました!」
特室のドアが勢い良く開かれ、捜査員である愛宕が入ってくる。
シグマは不機嫌そうな顔を彼女に向けた。
「もっと静かに入ってきてよ。うるさいなぁ」
愛宕への文句を口にしたシグマに、彼女は赤い缶の炭酸飲料を差し出した。
途端にシグマの表情が明るくなる。
「ドクペじゃん。やった」
手を伸ばすシグマだが、愛宕は差し出した缶を引っ込めた。
「ちょっと!」
「進捗はどうなの?」
シグマへの差し入れとしてドクターペッパーを買ってきた愛宕だが、彼女がちゃんと仕事をしていたか確認しないと渡さない。
「例のコミュで行方不明者たちとコンタクトを取っていたユーザーが都立中学校からアクセスしてたってわかったよ。あと今、消された会話を追って手がかりを探してるから」
早口でいいながら、シグマは愛宕の手からドクターペッパーの缶を引ったくる。
カシュッ――軽い音をたてプルタブを引き上げ、一気に飲み干した。
「ドクターペッパーって、炭酸よね?」
「そうですよ」
ドクターペッパー――炭酸飲料をイッキ飲みするシグマを見て、大人二人はヒソヒソと言葉を交わす。
信じられないという様子だ。
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