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◆ ヘルヘルランド・セントラルエリア ◆
【ビッグ・オークション】。それはヘルヘルランドでひと月に三回だけ開かれる、特別なオークションだ。
台風の過ぎた後の綺麗な青空の下、席に座り、待つこと数十分。時刻は14時前。
セントラルエリアの会場には、ケロタン、アグニスを含め、多くの人々が集まっていた。
その中には、いかにも金持ちといった風体の者もいるが、全体的に普通の客が多い。パンフレットにも書いてある通り、このオークションはお金の無い一般市民も楽しめるよう、工夫がなされているのだ。
ケロタンは入口で受け取った――ヘルシーの顔が描かれた金色のカードを見つめた。
何だか少しリッチな気分だ。
《♪ ♪ ♪ ♪ ♪》
「おっ。」
スピーカーから陽気な音楽が流れ出した。
それは始まりの合図。
舞台袖から一人の男が現れ、設置されたマイクを手に取る。
「ようこそ! ビッグ・オークションへ!!」
現れたのは、シルシルTV局のアナウンサーとして有名なノーマン――シカーイ。
「皆さま、台風の後にもかかわらず、今回も会場いっぱいにお集まりいただき、ありがとうございます!
今回も選りすぐりの商品を取り揃えているので、最後までお楽しみください!
司会進行はお馴染み、私、シカーイが務めさせていただきます!」
《パチパチパチパチ!!》
シカーイの挨拶で、会場は拍手に包まれる。
「あの人、ほんと何処にでも出てくるよな。」
安定の――という奴である。
実際、シカーイ以外の司会を見たことがない人もいるほど、彼はあらゆる番組・イベントに引っ張りだこ。その行動スケジュールは謎に包まれていて、巷ではシカーイ複数人説がまことしやかに囁かれている程だ。
「ふっ……。」
アグニスは何やら訳知り顔だが、業界の闇という奴なのだろうか。
「後日、このオークションの模様は各種メディアで報道される。お前は私の連れなんだ。悪目立ちはするなよ、ケロタン。」
「分かってるって。」
「……警戒が必要だな。」
最早、ケロタンの言葉は何一つ信じられない。
「皆さま、入口でこのカードはお受け取りになったでしょうか? 貰っていないという方は、係員にお申し付けください。」
シカーイは金色のカードを掲げ、舞台奥のモニターにも、その様子が映し出される。
「そして、お持ちの方は、目の前の机の上にあるカードリーダーに、これをお挿しください。」
モニターに手順が表示され、ケロタン、アグニス、そして他の客達は、その通りにカードを挿していく。
《ピッ!》
すると、その横の小さなモニターに数字が表示された。
「おめでとうございます! 皆さまのカードにボーナスマネーがチャージされました!
本オークションの一部の商品は、このマネーを使って落札することが可能です。
完全無償なので、どうぞ遠慮なくお使いください。」
「すげー、太っ腹だよな。」
「一応、言っておくが、その金を持ち帰れる訳じゃないからな。」
落札できなければ無に等しい。
「皆さん、準備は完了したようですね。では、参りましょう!
本日、最初の商品は、こちらです!」
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