第2話「勇者の石」

4/16
前へ
/107ページ
次へ
 《プシュー!!》  シカーイが腕を伸ばすと、それに合わせてステージの床が開閉。そこから白い煙が溢れ、中から商品が姿を現した。  「ロットナンバー01、ヘルシープロのプロテインドリンク! 一ヶ月分!!」  《ヘルシィー!!》  商品の紹介直後、モニターにヘルシーの顔マークが大きく表示された。  「早速、出ました! スーパーヘルシー!! この商品はボーナスマネーでのみ落札が可能です!」  「おお!」  「まずはVTRをどうぞ!」  シカーイがそう言うと、ステージのモニターと各席のモニターに映像が流れ始める。  《あの超優良健康食品メーカー、ヘルシープロから、一ヶ月分のプロテインドリンクが登場!   アマチュアからプロまで、多くのスポーツ選手や冒険者が愛飲している超人気商品!   タンパク質含有量は、なんと一本50g!   味の種類も豊富で、飲みやすいと評判! 効果実感の声も多数寄せられております!!   運動後に訪れるゴールデンタイムに、貴方もこれを飲み続ければ、一ヶ月後にはムキムキボディをゲット!! もうどんなピンチも怖くない!!》  「俺のこの腕も太くなるのか!?」  興奮するケロタン。  「それでは入札のルールを説明しましょう!   この商品が欲しい! と思った方は、モニターに提示額を入力し、入札ボタンをタップしてください!   一定時間後、皆さまの入札額を一斉に公開し、最も額が高かったお客様に、この商品を差し上げます。   ちなみに! 入札に使った分のマネーは負けても失われてしまうので、ご注意ください!」  「ってことは、チャンスは一度きり……。最初の入札額で勝負するのか……。」  「しかも、負けた場合も、入力した分のマネーは失われてしまう。さて、どうする?」  「う~ん、悩む。あれの価値って、普通どんくらい?」  「一ヶ月分なら、100ちょっとくらいだろう。」  「そうか……ところで、俺プロテインってよく知らないんだけど……。」  「はぁ……分かってないのか……。」  アグニスは呆れる。  「三大栄養素の一つ、タンパク質のことだ。筋肉や骨など、体を作るのに必要になる。普通の者なら、一日の食事で十分な量をとれるが、長時間、激しい運動をする者は、多く消費するからその分必要量が多い。   だからスポーツ選手なんかは、ああいうもので補っているんだ。」  「へぇ~、じゃあ欲しいな。」  「チャージされたマネーは1000ライドだが、どうする?」  「う~ん、確実に手に入れるんだったら、全額突っ込めばいい訳か……。」  「もし他にそうした奴がいたら、ジャンケンかその他の方法で決めることになるがな。パンフレットをよく読め。」  「うう~ん……!! アグラン頼む! 後であれ買ってくれ!」  「……はぁ、見合う働きをすれば考えよう。」  「皆さま、入札はできましたでしょうか?   それでは見ていきましょう!」  シカーイがリモコンのボタンを押すと、全員の入札額が次々と公開され――。  そして、最も入札額の多い者の席が激しく点滅する。  「おめでとうございます! 503ライドの方、見事落札です!!」  中々体格の良いノーマンがガッツポーズを決め、他の客は拍手を送る。  「う~ん、504ライドなら勝ってたか。」  「そんなピンポイントで狙えれば苦労はしないだろう。   ただ、ライバルは少なかったようだな。」    机のモニターには全員の入札金額が表示されている。  見ると、確かに0が多い。  「ああっ! アグラン! 画面をキャプチャしてくれ! 覚えらんねぇ!!」  「よく見ろ。左下のボタンから履歴が見れる。」  「おっ。」  《グイーン……!》  商品が床下に戻り、次の商品の準備に入る。  「落札者の方は、オークション終了後に画面が切り替わりますので、そこに商品送付先の住所を入力してください。   そして惜しくも落札できなかった方、気を落とす必要はございません!   まだまだ多くのチャンスがあります!」  「続いての商品はこちら!!」  《プシュー!!》        
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加