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◆ シルシルタウン・中央広場 ◆
「おうおうおう!! 随分でかい現行犯じゃねーか!!」
平和な町に、突如出現した巨大二足歩行ロボット。その全長約70m。
それと対峙しているのは、シルシル警殺署長のブッタギリィ(種族:スモールノーマン)だ。
《グオオオオオオオ!!》
「っ!! 止まれえええええい!!」
「しょっ……! 署長ぉ!!」
《ゴオオオオォォン!!》
叫びを上げたロボットは、身を屈め、広げた両腕で周囲を薙いだ。
舞い上がる粉塵。後には何も残らない。
ブッタギリィの部下――ホウカ(種族:ノーマン(3~4頭身の人間のような種族))とタイホィ(種族:スモールノーマン)は、その光景を見て震え上がった。
「あぁ……、何てことだ。」
「ひいぃ……、あんな化け物。どうやって倒すんですか……!?」
警殺の誇る最高戦力の一角をあっさりと屠った巨大モンスターに太刀打ちする術は、新米である二人には無い。
《キキィーッ!!》
その絶望に、一台の警殺車両が飛び込む。
中から現れたのは、メッタギリィ、アグニス、ケロタンの三人。
「おい、アグラン! あれって……!?」
「間違いない。盗まれた設計図に書かれていたのはあれだ。」
「いや、お前……。」
ケロタンは巨大ロボットをもう一度見た。
ラド族型で、赤いボディに黄色い角……。
「そっくりなんだが。」
「何だその目は。言っておくが、色を付けたのは私では――」
今はそんなことを話している場合ではない。
「副署長ぉ~!!」「一大事です!」
倒壊した建物に隠れていたホウカとタイホィが、メッタギリィに駆け寄ってきた。
「お前達、住民は避難したのか……!?」
「はっ、はい! 署長の御蔭で何とかっ!!」
ホウカが答える。
「そうか……、それでその恩人は何処だ……!?」
ケロタンがロボットの周辺を見るが、ブッタギリィの姿は何処にも無い。
その時、メッタギリィは地面に突き刺さった一本の剣を目にした。
「署長のブッタギルティソード!!」
遠目にはチェーンソーにしか見えない大剣。あれはまさしくブッタギリィの武器!!
「何!? まさか……!?」
メッタギリィに続き、ケロタンも気付く。
「署長は我々の為、たった一人で……。」
「最後まで悪と戦う意志を捨てませんでした!!」
涙ながらにブッタギリィの勇姿を語るホウカとタイホィ。
メッタギリィのドス黒いオーラが赤く染まる!
「あのクソロボット!! 俺がKILL!!」
「メッタギリィがキレた!!」
飛行魔法でその場から飛び立つメッタギリィ。
風圧でケロタンは吹っ飛ばされる。
「ウアーッ!」
そしてメッタギリィは、更に加速魔法と防御魔法と後何かを何重にも重ねがけ、恐ろしいスピードで巨大ロボットに向かっていく!
「おおおおっ!?」
起き上がったケロタンは、思わず声を出す。
《ガキイィィン! ズガアアアアン!!》
だが――音速の一撃はロボットの装甲に弾かれた。
メッタギリィの刀は折れ、彼自身は近くの建物に激突。姿は見えなくなった。
「何をやってるんだ、あいつは。」
あまりにも馬鹿過ぎる突貫に呆れるアグニス。
「あぁ……副署長まで……!!」
「まるで歯が立たないなんてぇ!」
愕然とするホウカとタイホィ。
「なぁ、アグラン。弱点とか無いのか?」
「ケロタン。あれだけの巨大ロボットを動かす為に必要なエネルギーは何処から供給されていると思う?」
「分かんねーよ!」
「…………。」
詳しい説明は後回しだ。
「もしあれが私の設計図通りに作られているのなら、あの頭の角が弱点の一つだ。」
「よっしゃ!」
ケロタンはそれを聞くと、近くの倒壊した建物に駆け上り、ロボットに向かって走った。
「おい、待て。どうする気だ!?」
「必殺……!」
ケロタンは駆けながら、力を溜めた。
右手が発光し、そこに光の球が出現する!
「《ケロダン》!!」
掛け声と共に勢いよく放たれる光球!
《バアアァァン!!》《グオオオオォォ!!》
それは巨大ロボットの左頬に命中し、爆発!
巨体を僅かによろけさせる程の威力!
「へへっ。いつも相手にしてる魔物よりだいぶ反応が鈍いぜ。
巨大ロボットだか何だか知らねーが、つまりはちょっと図体のでかい凶暴で馬鹿なアグランってことだろ!?」
「軽く見られたものだな。」
ケロタンの後方でアグニスは苛立った。
《ドゴオオォォン! ドゴオオォォン!》
ロボットは攻撃を受けたことにより、進行方向を変える。
当然、ケロタンのいる方に。
「うわぁ! 来たぁ!!」
それを見たケロタンは、蜘蛛のようなスピードでアグニスのところまで戻ってきた。
「おい……!!」
「高過ぎて俺じゃ狙えないんだよ。だからあいつに任せる。」
「何……?」
アグニスは向かってくる巨大ロボットを見た。
「あれは……。」
その後ろ。先程、メッタギリィが突っ込んだ建物の上階から何かが飛び出した。
「死体ぐらい確認しとけボケェ!!」
メッタギリィである。
「さっき車から降りる時に拝借した警殺無線機だ。弱点はバッチシ伝えといたぜ。」
「そうか。」
案外、抜け目の無いケロタン。
「喰らえ!! 極殺式剣術――」
しかし、メッタギリィが頭部の角に技を放とうとした瞬間だった。
《グオンッ!!》
ロボットの頭部が180度回転!
「何ィ!? 回るだと!?」
《グオオオオオ!!》
ロボットの口が大きく開かれ、発光! 何かが放たれようとしている!!
「だがっ!!」
メッタギリィは飛行魔法で急速旋回!
《コオオオオオオオ!!》
ロボットの口から放たれたオレンジ色の光線を間一髪回避した!
「くそっ、あんなこともできるのか!」
驚愕するケロタン。
だが、思いもよらないチャンスが訪れる。
地上に下りたメッタギリィを攻撃する為か、ロボットが身を屈めたのだ!
「隙ありぃ!!」
ケロタンは溜めていた力を放った。
飛んでいく光の球――それはロボットの角に真っ直ぐ向かい――。
《バアアァァン!!》
見事命中! 体ほど硬くはないようで、角は頭から外れ、遠くへ吹っ飛ぶ!
《ゴゴオオオォォン!!》
効いたのか、体勢を崩し、顔面から地面に叩き付けられるロボット!
「おおっ、やったぜ!」
快哉を叫ぶケロタン。
トドメを刺そうと倒壊した建物を伝い、ロボットの背中に飛び乗る。
《ぐぐぐっ……!!》
「うおっ……!? 何だ?」
乗った瞬間、ケロタンは何かが蠢くような音を聞き、その場に停止した。
その時、ロボットの瞳がより強い輝きを放つ!!
《グオオオオオォォン!!》
「やっべ!」
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