第1話「動き出した運命」

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 ケロタンは力を溜めるのをやめ、ロボットの背中から離れようと跳躍した。  しかし、ロボットが立ち上がるスピードの方が速く、ケロタンは鋼鉄の巨体に押され、吹っ飛ばされた。  《バンッ》「いてっ。」  建物の外壁にぶつかり、地面に落ちる――。しかし、ロッグ族で物理的な衝撃に強いケロタンはほぼ無傷。  「何だってんだ一体……!?」  《グオオオオオ!!》  「……!」  ケロタンは目を見開いた。  ロボットがこちらに顔を向け、口を大きく開けている。  (またあの光線を……!)  ケロタンはその場から離れようとした。  「っ!」    だが、目に入ってしまった。  建物の影で震える一人のフレイ族(手足はロッグ族と似ているが、胴体はスモールノーマンに似ている。また、頭に金属の冠をつけている。)の少年の姿が。  「いい感じに逃げ遅れてるな……!」  ケロタンは少年の元に走り、その腕を掴んだ。  《コオオオオオオオ!!》  「くそっ!」  逃げるのは間に合わない。オレンジ色の光線が向かってくる。  ケロタンは魔法の障壁を張り、何とか凌ごうとした。  その時だった――。  《キキィーッ!!》《ゴオオオオオオ!!》  警殺(けいさつ)車両ケイバツがケロタンの前に現れ、その上に乗ったアグニスが光線に向かって炎を放ったのだ!  「ケロタン、乗れ!!」  運転席から叫ぶメッタギリィ。  ケロタンはフレイ族の少年の手を引っ張り、急いでケイバツに乗り込んだ。  《ブオオオオオオ!!》  勢いよく発進するケイバツ。  「アグラン! ロボットは!?」  ケロタンは車の上のアグニスに状況を尋ねた。  「あのロボットの弱点はラド族と同じにしてある。角を破壊すれば、すぐに動作を停止する筈なのだが……、どうやら、私の設計図通りには作られていないらしいな。」  「じゃあどうやって倒すんだ!?」  「とりあえず今、手足の関節部を破壊した。これで上手く動けない筈だ。」  「えっ?」    ケロタンは窓から顔を出し、ロボットを見た。  アグニスの言う通り、腕や脚の一部が破壊され、姿勢が崩れている。  「私一人で片付けてもいいが、街中であまり炎を使いたくない。   ケロタン、メッタギリィ。後は任せたぞ。」  アグニスは心底つまらなそうな声音(こわね)でそう言うと、車の上から飛び降りた。  《キキィーッ!!》  「うおっ!」「うわっ!」  車が再び急停車し、後部座席のケロタンとフレイ族は前のめりになった。  「ホウカ! タイホィ! その一般人は任せた!」  予備の刀を手にしたメッタギリィが車から降り、再び飛行魔法でロボットに向かって飛んでいく。  「ったく、どうりでアグラン。落ち着いてる訳だ。」    車から降りたケロタンは、納得した表情で後ろを見た。  アグニスにとって、目の前の巨大ロボットは大した脅威ではないのだろう。  「俺も負けてらんねぇな。」  ケロタンはフレイ族の少年がホウカとタイホィに連れられていくのを見届けると、巨大ロボットに向かった。  「極殺(ごくさつ)式剣術……! 《血飛沫(けっしぶき)》!!」  魔法で刀のリーチを伸ばし、高速回転しながら破壊された関節部に突っ込むメッタギリィ!  《キュイイイイィィン!!》《ゴゴオオオォォン!!》  斬り落とされた巨大な腕が地面に落下し、周囲に大きな音が響く。  ケロタンが見た時には、もうロボットの両腕は無くなっていた。  「っ! 何だ……?」  ケロタンは(いぶか)しんだ。  斬り落とされた部分から、オレンジ色の液体が溢れている。中に機械がびっしり詰まっていると思われた部分は……空洞だった。  「よく分からねーけど……!!」  《バシュッ! バシュッ!》  ケロタンは両腕から光の球を放った。  《バアアァァン!!》  それは両脚の関節部に命中し、破壊を更に深刻なものにした。  《ケロタン!》  直後、無線からメッタギリィの声!  「どうした!?」  《飛ばし過ぎたみたいだ。そろそろ魔力が切れる。》  「分かった。後は俺がやる。」  ケロタンは魔法で空中に四角い足場を作り、階段を上るようにしてロボットの頭を目指した。  「んっ!?」  その時、ケロタンはロボットの口からもオレンジ色の液体が飛び出ているのに気付いた。  《コオオオオオ!》  「何っ!?」  その液体は発光し、オレンジ色の光線をケロタンに向けて放ってきた!  「《バリア》!!」  間一髪! ケロタンは魔法の障壁で光線を弾いた!  ――が、足場を維持することが出来なくなり、落ちていく!  「くそっ!」  《お困りのようだな。》  「!?」  そんな時、無線からメッタギリィとは別の声がした。  《その声は……!!》  今度はメッタギリィの声。  「ブッタギリィ!? 生きてたのか!!」  《お前らが注意を引き付けてくれた御蔭で、技の準備が完了した。感謝するぞ。》  現在、ブッタギリィがいるのは、ロボットの真下。  「破導(はどう)式大剣術奥義――!!」  魔法で恐ろしい程に巨大化・赤熱した大剣を手に、彼は飛翔。上に飛んだ。  「空爆一閃!」  《ガアアアアアァァ――!!》  ロボットの体を真っ二つに裂きながら上昇していくブッタギリィ!!  豪快な斬撃は、すぐに頭に到達!!  「《大破薙火(おおはなび)》!!」  《ドゴオオオォォン!!》  ロボットの頭は吹っ飛ばされ、上空で爆発四散! 町にオレンジ色の液体が降り注ぐ!  そして頭部を失ったロボットは、完全に動きを停止した。  「ふー……。」  その様子を遠くから見ていたアグニスは、静かに呟いた。  「掃除が大変だな……。」
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