今日でさよなら

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 美香との出会い自体は月並みなものだった。  会社の後輩が結婚する事になり、お祝いのパーティに招かれて出かけた先で、新婦の友人の一人だった美香を紹介された。  正直、花嫁よりも顔立ちは華やかな印象だったけれど、それをシンプルで控えめなドレスで隠して目立たないようにする奥ゆかしさを感じた。  二次会の流れで飲みに出かける頃には打ち解けて、連絡先を交換し合うまでになった。気さくで、ちょっと癖はあったけれどその頃はまだおどける様な素振りもなかった。何よりこちらの話をちゃんと聴く事ができる女性だったのが好ましかった。  話す相手の眼を見て、厭味にならない程度に頷き、間に自分の言葉を挟まない。その姿勢こそ『彼』が彼女にしつけたものだったのだろうか。それとも、彼女が育ってきた環境の中で身につけたものなのだろうか。
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