今日でさよなら

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 先にも書いたけれど、ぼくの事を好きだ、付き合いたいと言い出したのは美香の方だった。彼女は電話やメールやSNSではなく、ちゃんと逢って、ぼくの眼をはっきり見て言ったのだ。 「あたし、吉沢さんが好き。お付き合いしたい。ダメかな?」  そんな言葉を彼女に真正面から言われて断れる男はそういないと思う。年長者でもあったし、ぼくはそれまで食事したり、お酒を飲んだりしてもいつも一定の距離を置いているつもりでいたし、自制もしていたつもりだ。  けれど本人からそう言われて、嫌ですと言えるほどぼくは老成していなかったし、第一に彼女の事が大好きだった。こんな女性にはそうそう出会えるものではない、そう思った。 「こちらこそ。よろしくお願いします」  これもとても月並みな返答を、ぼくはした。
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