今日でさよなら

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 愛し合う時も、美香はぼくが知っているどんな女の子よりも丁寧に全身に口づけをしてきた。特に首筋、胸元には沢山のキスの雨が降った。それは美香の愛情の証だと感じていた。男女が愛し合う過程は年齢と経験を経る中で何がしか愛し方を学んでいくものだし、そんな事を気にしていたら、今の時代に恋愛などできはしない。  けれどこうしてぐだぐだと思い出して行くと、他の男性の存在を窺わせる点は確かにあった。時間的な制約だって、ぼくがそう思っているだけで彼女にとっては幾らでもコントロールできたのかもしれない。彼女はとても率直で、クレバーな女性だったから。  ふと、合鍵など渡したから疎ましがられたのではないか、と思いついた。けれど合鍵を渡した時、美香は穏やかな笑みを浮かべてこうも言ったのだ。 「合鍵ってなんだか嬉しい。心を許してくれてるんだなって思うから」
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