先に有るもの

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 気付けば私は、先の見えない廊下の上に立っていた。廊下は少し薄暗かった。廊下の壁は白く、そして壁には、一定間隔で無数の扉が取り付けられていた。扉はライトアップされたものそうでないものに分かれ、扉の上にはプレートが貼り付けられていた。それぞれ何か書かれていたが、漠然とした理解しかできなかった。しばらく廊下を歩くと、何故かは分からないが、とある扉に目が止まった。相変わらず、何が書かれているかを、完全には理解できなかった。扉を開けた。再び長い廊下が現れ、そして今度は、先ほどとは又違う様々な色で中央がライトアップされた廊下が長く、果てしなく続いていた。その廊下に、扉は無かった。少々迷ったので、違う扉も開けてみた。その廊下は真っ暗であった。扉が閉まれば、何も見えなくなるのは想像がついた。先ほどの扉に戻り、通って中に入った。扉は自然と閉まった。緊張することもなく、何となく廊下を歩いて行った。ライトアップの色合いの変化は面白く、時に明るく時に暗く、飽きることがなかった。そして、有る場所で、有ることに気づいた。数十メートル先が、真っ暗だったのだ。真っ黒の空間の前まで歩き、なんとなく止まった。進もうか一瞬迷った。特に何かを考えたわけでは無かったが、一歩前に進んでみた。明かりがつき、足元が照らされた。色はオレンジ色。気分が明るくなった。一歩ずつ歩みを進めて行った。色は時々、自分が望む色とは全く違う色になることもあった。それは、時に驚きであり、時に落胆であった。先はまだ見えない。だが、私はもはや先など気にしなくなっていた。自分の一歩一歩が、道を彩っていくのが楽しかった。先の道は見えない。だがそれでいい。道は私が作っているのだから。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!