20人が本棚に入れています
本棚に追加
(04)揺らぎ
その日の夜、与晴と茂山は部屋着で茂山の部屋にいた。
「……お疲れさん」
「……お疲れ様でした」
「……姉御の仇討ちは来週だ。心してかかれ」
今度の取調は与晴がやっていいと許可が出た。
「はっ。必ずや……」
「そういえば、雄翼は今日どうした?」
帰宅時から彼女はもういなかった。
「慧さんと西谷と袖崎さんとで『女子会』です」
いままで男だらけの付き合いばかりだった。
一度、親友の沙代と会ったくらいだろう。
やはり息抜きは必要だと茂山は思った。
「嫌なこと忘れて、リフレッシュしてくれれば何よりだ」
「そうですね」
「で、迎えには?」
「慧さんが送ってくれます」
「姐さんありがとうございます! じゃあ、ゆっくり飲めるな」
「はい」
二人で酒盛りを始めた。男同士気兼ねなく話す。
「でもさ、ほんとのところ、大っきいのが好きなんだよね?」
「そうですけど、一番大事なのは気が合うかどうかですよ」
「ほう。で、まだ新しい彼女が出来ないと。
合コンそろそろ参加しようじゃないか」
与晴は職場だけでなく全ての合コンの誘いを断っていた。
「しばらく作るつもりないです」
「なんでよ?」
「先輩が大変な時に、俺だけ遊んでられません」
「クソ真面目。でも、雄翼にももっと自由にしろって言われてんじゃん」
「言われてますけど、その気になりません。今は仕事が楽しいんで」
「そう?」
なんとなく影がある彼の様子が茂山は気になったが、
触れることはしなかった。
酒が少し回った頃、突然与晴は正座した。
「あの…… 折り入って、相談が……」
「なんだね?」
「昨日のサウナの件で……」
『大きいのが好きなの?』と悪ノリしたつばさに聞かれた与晴は調子が悪くなったわけでも、のぼせたのでもなかった。
気づいた茂山は、異様に焦った与晴に絶対につばさに言わないでくれと頼まれていた。
「え? あぁ……
あれは熱さが原因でしょ。血流が良くなってさ……
俺もたまにあるよ。雄翼全く気づいてなかったし、大丈夫だよ。
のぼせたって言ったら普通に信じてた」
「熱さとは多分違う気がするんです……」
何やら悩んでいる様子だ。
「……じゃあ、雄翼の裸に興奮したってこと?」
冗談交じりに言うと、盛大なため息をついた。
「……わからないんです」
深刻な様子の後輩。
これはふざけたらダメなやつだと茂山も正座した。
最初のコメントを投稿しよう!