(02)友

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 玄関の扉を開けるなり、彼は『御免』と一言発し、部屋の中に入ろうとした。 「ちょっと! 何してんの!?」  無理やり押し出した彼は、深刻な顔だった。 「『小野先輩の部屋に女が押しかけてきて出て来ない』と、とある後輩が報告しに来た」  実質最年長の茂山は、独身寮のまとめ役みたいなもの。彼に報告が行くのは道理。 「そこで事実確認に来た次第。御免!」  また部屋に勝手に入ろうとする彼をまた止める。 「勝手に入らないでよ!」  茂山は眉を顰めた。 「やっぱり誰か女が来たんだな?」  誰かは分かってないらしい。さあ、どうしたものか。 「答えるんだ!」  つばさは咄嗟に叫んだ。 「与晴! 居る!?」  彼は運良く部屋にいたらしく直ぐに飛び出てきた。 「どうしました!?」 「茂がオレの部屋に押し入ろうとしてる。止めて!」  茂山は黙っていない。 「雄翼の部屋に女が押しかけた。今からガサ入れだ。 手伝ってくれ」  与晴は少し考えた後、つばさではなく茂山に付いた。 「わかりました。先輩、部屋入りますよ」  あれだけ自分の部屋に上がるのを避ける彼がそう判断したということは、彼にとってこれは緊急事態らしい。 「だったら与だけにして。茂は絶対にダメ」  拒まれた彼は眉をひそめた。 「……余計怪しいな。与、行くぞ」 「はい」 「茂はダメ!」  抵抗虚しく押し入られた。
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