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出勤後直ぐにつばさは三宅に人気のない廊下に一人呼び出された。
「……宮田警視正が謹慎処分になった。聞いているか?」
驚いたが今朝の電話口の彼の元気のなさはそれが原因かと妙に冷静だった。
「……いいえ。どこ情報ですか?」
「……岩井警視正から今朝電話で。
先輩も寝耳に水だったらしくて捜一に問い合わせたって」
「……それで原因はわかったんですか?」
彼は今、先日発生したある強盗殺害事件の最前線におり、その片手間に交代制で伊東唯梅の警護に入っているはずだった。
どちらでなにをやらかしたのか。不安よりも気になった。
「……警護の仕事の方で、ITOUの社長か会長の逆鱗に触れたんじゃないかって」
それを聞いて苛立ちを隠せなかった。
「なんでそんなことで謹慎処分にならないといけないんですか?」
しかし、和義と唯梅との接触がこれで無くなるという安堵と嬉しさを少なからず感じていた。
「一企業が公務員をボディーガードに使うのがそもそも間違ってますよ。私費で雇えって」
そして自分は唯梅へ嫉妬しているのだと自覚した。
「……また追加で情報取れたら共有する、ただ、絶対に宮田警視正に故意に接触するんじゃないぞ」
「わかってます」
「班内にも共有する。茂山が調べたがるだろうけど、止めておく」
「了解です」
三宅は事務室に戻って行った。
つばさは一緒に戻らず、屋上へ向かった。
周りに誰も居ないことを確認し、電話を掛けた。
相手は、探偵の池辺。
「……お世話になっております。小野です。例の件、ありがとうございました。助かりました」
彼は探偵の仕事を知ってもらうのは成果を見せるのが一番だと言い、
秋山を追い吉田茂山ペアが得られなかった情報を手に入れてつばさに提供してくれた。
彼の能力を認めると、対価として彼の求めに応じて、問題にならない範囲内で
彼の求める情報を渡した。
「……そうですか。良かったです。
……はい。……そうですね。
それで、今回は別件で私費でお願いしたいことがありまして。
……会社のメールに、でよろしいですか?
分かりました。ありがとうございます」
つばさは宮田和義警視正の調査を彼に頼むことにした。
婚約者としての不安を誤魔化すかのように、一刑事として。
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