(02)へるまふろでとす

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 許可はすぐ降りた。 しかし、検視継続中だから邪魔はするなと釘を刺された。  会議室を出た途端、何者かにジャケットの裾を掴まれた。  振り向くと相棒だった。かなり不安そうな顔だ。 「……ちょっと、どこ掴んでるの?」  少し可愛いと思ってしまった。  彼は謝って手を離した。 「付いて行っても良いですか?」  彼の目を見て言った。 「……今からわたしが行くとこわかってる?」  井上に許可をとる時、彼は隣で聞いていた。知っているはずだ。 「……はい」 「だったら無理して付いてくるな」  しかし彼は引かなかった。 「不謹慎かもしれませんが、綺麗な仏さんで耐性をつけたいです」 『慣れたらダメ』と言い続けたせいか彼は『耐性』という言葉を使った。  少しつばさは考えた。 目眩や嘔吐しない程度になることは、確かに彼に必要だ。 「……会議室におにぎり置いてあったけど、あれ食べた?」  誰かが買い出しして来てくれたらしい。 自分も見に行って気分が悪くなったら困るとまだ手をつけてはいなかった。  万が一の為の確認。 「……いいえ」  彼の胃の中は空だ。 「……わかった。行こう」  鑑識の部屋へ向かった。 「仏の性別は何で判断してるんです?」  彼の質問につばさは答えた。 「見た目だね」 「死後数時間で綺麗なのに見た目でわからないって、どういう状態ですか?」 「……それが分からんから、見に行くのだよ」  すぐに鑑識の部屋の前に到着した。  気持ちを落ち着かせるため深呼吸して隣の相棒に言った。 「まずは鑑識の話を聞く。それから仏さん確認。 ダメだとおもったらすぐに言いなさい。我慢や無理しない。良いね?」 「わかりました」  扉を開けた。
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