(02)へるまふろでとす

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 つばさは女性鑑識官に話を聞いた。 「着衣はどういう状況でしたか?」 「インナー、アウターは全てメンズでした。 ご遺体を遺棄した際に付いたのか、スラックスとジャケットに引き摺った跡がありました」  核心に切り込んだ。 「……なぜ性別不明という判断を? 目立った外傷無しと聞きましたが」  女性担当官は少し迷った様子を見せた。 つばさはすぐに質問を切り替えた。 「今検視してるのはどなたですか?」  一人、つばさと以前から仲が良い鑑識官が居る。  三宅と同期の男性鑑識官で、三宅が繋いでくれた縁だった。  彼とは小野雄翼としても、関係を作り直していた。 「澤田さんです」  彼だ。 「では、直接聞きますね。ありがとうございました。すみませんお忙しい中」  二人は処置室へ向かった。 「お疲れ様でーす」  書類を書いていた男性鑑識官、澤田へ声を掛ける。 「おー。お疲れさん。あれ? 佐藤君連れて来たの? 大丈夫?」  彼は岩井つばさの相棒である与晴のをよく知っていた。 「仏さん綺麗って聞いたんで耐性をつけさせようと思って。な?」  三宅班の中以外では男のフリをしっかりする上司に肩をたたかれた。 「……大丈夫だと思います」  という言い方が大丈夫に聞こえなかったらしい。 「無理やりは可哀想でしょー」 「違いますって」 「ほんと?」  笑いながらやり合ってる二人。 気持ちの余裕があまりない与晴は彼らの間に割って入った。 「自ら志願して来ました!」  しかし澤田は信じていないらしい。 「岩井ちゃんが頑張って育ててた佐藤君になんかあったら、代わりに俺が怒るからな?」 「わかってますって。信用されてないなオレ……」  まだまだ岩井つばさへの信頼度に小野雄翼では勝てないらしい。  澤田はつばさの目を盗みこっそり与晴に言った。 「男の上司の方が、乱暴でキツいでしょ。 本当に無理したらダメだからね? いいね?」  仲が良くても、やはり小野雄翼の正体には気付けないのかと与晴は思った。 「……はい。お気遣いありがとうございます」
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