(02)へるまふろでとす

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「……で、仏さん、なんで性別不明なんですか?」  つばさの質問に澤田は言葉を濁らせた。 「それなんだけどね……」  彼は部屋の奥に横たわるご遺体に目をやった。 顔は白い布で、身体は白いシーツで覆われている。 「……百聞は一見にしかず。こっち来て」  二人はご遺体に手を合わせた。 「首から上だけだなら、男だと判断する」  白い布を取って見えたのは、ただ穏やかに眠っているだけのような人物。  髪は短くセットされている。  優しい柔らかい雰囲気の骨格と顔立ちは女性的に見えるが、髭の剃り跡がはっきり見えた。 「……大丈夫?」  そっと気遣うつばさに与晴は黙って頷いた。  首にはよく見ると締め付けられたような跡がある。  その喉には喉仏がはっきり見えた。 「……この痕、絞殺ですか?」  大丈夫だという証拠に与晴は指をさして澤田に質問した。 「……うん。そうだと思う。でも確信が持てない」  まだ断定はできないらしい。 「でね、問題は身体なんだよ……」  局部を隠した状態で晒された身体を見た二人は息を呑んだ。  肩幅は広くがっちりとして男性に見える。しかし、胸にはどう見ても女性の胸があった。  しかし腕は筋肉質。体毛も男性のもの。  しかし手はスラリとした女性に見える。  腰は括れ臀部は女性。しかし、脚にはしっかりと筋肉が付いていた。 「個人差、病気、手術…… 色々あるからって思ったんだけど、 が理由で俺の知識経験レベルじゃちょっとお手上げでね……」  澤田は隠されている局部を指さした。 「……見た目には完全なのが男女両方ある」 「……え?」  つばさは理解が追いつかなかった。 そんなことがあるのだろうか? 「それと、不可解なのがね、下腹部を開けて閉じた痕があるんだよ」  まずいと思った途端、隣の与晴が案の定嘔吐(えず)いた。 「与、与、一旦出よう」  彼を部屋の外へ慌てて出そうとすると、彼は拒んだ。 「大丈夫です」  そう言った傍から蹲った。目眩だろう。 「無理するなって言っただろ! いいから出ろ!」  彼を部屋から引っ張り出した。
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