(02)へるまふろでとす

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 相棒は電話をしていた。  誰に掛けているのか?  彼は電話を終えると直ぐにつばさに報告した。 「玄さんに軽く報告入れておきました。外出していいって言われたんで、晩飯行きましょ」  つばさは驚いた。 「……食べられる? 大丈夫?」 「はい。……腹減りました」  今まで検視の前に嘔吐を防ぐため食事を抜き、事後は必ず食欲喪失で何も食べられなかった。  今日はちゃんと食欲がある。  つばさは一安心しつつ、少しだが成長した部下を微笑ましく眺めた。 「よし。兄ちゃんが奢ってやる。何食いたい?」  久しぶりに彼の瞳が揺れたことに気付いた。  気まずくなったつばさ。 しかし直ぐに彼は明るく言った。 「ありがとうございます! 兄貴! ラーメンがいいです」  大丈夫そうだ。 「……わかった。好きなとこ行きな。兄ちゃんは付いてくから」  今度は彼の瞳は揺れなかった。 「えー、どうしようかな……」  途端に悩み出す。  彼を見てつばさは思った。  彼が可愛い。  先輩として上司として、以前よりも慕って付いてきて、助けてくれる彼が本当に有難いしなにより可愛い。  だからこそ彼を任せられると自分が納得出来きた人間にだけ彼を託したい。  しかし、彼とのコンビ継続にはタイムリミットがある。それは自分で設けたもの……  自分がどうなろうが検討と調整をもう始めなければならない。  初めて焦りと寂しさをも感じていた。
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