(02)へるまふろでとす

9/9
前へ
/332ページ
次へ
 仕事の合間に、交代で休憩と昼食を取る。  コンビニおにぎり片手に、つばさは法医学医が呟いていた『ヘルマプロディートス』について調べていた。  美少年の神、ヘルマプロディートス。 泉で水浴び中、彼に惚れたニンフに言い寄られる。  彼は断った。しかしニンフは強引に迫った挙句に神に願った。  彼と離れたくないと。 その願いが神に聞き届けられ、二人は合体してしまった。  男でもあり女でもある身体になってしまったヘルマプロディートスは呪った。 この泉の水を浴びたものは、皆自分と同じような身体になってしまえと。  実に理不尽極まりない話だ。  己も理不尽にわけも分からず姿を変えられた。  そのせいか、他人事とは思えなかった。  しかし、自分以外の誰かが同じようになって苦しめばいいとは全く思わない。    第二の被害者を出してはいけない。  警察官としての正義感が個人の恨みよりも強かった。  そしてまだ名前も性別も分からない仏を思った。  早く死因と身元が分かりますように。  早く家族の元へ帰れますように。  そう願い仕事へ戻った。
/332ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加