(04)この道は茨道?

1/11
前へ
/332ページ
次へ

(04)この道は茨道?

 遺体発見現場付近の喫茶店に二人は急行した。  神谷とそのお友達から、手袋を落として行った怪しい男の話を丁寧に聞きとった。  証拠品になり得る物を受取ると、つばさ軽く操作状況を説明した。 そして神谷に今後身の安全のため、極力遺体発見現場には近づかないで欲しいと丁寧に頼み込んだ。  最後につばさは、生活保護に繋げるべく彼に話をした。  しばらく渋っていた神谷だったが、最後に折れた。 「……わかった。こんなに親身になってくれて、人として扱ってくれた刑事は、 兄ちゃんたちが初めてだからな。来週、役所に行ってみる」  神谷はつばさの願いを受け入れてくれた。 「ありがとうございます」 「二人とも、頑張ってくれよ犯人逮捕」 「はい」  店を出る際、与晴は何故か神谷に引き止められた。 「先輩、先行っててもらえますか?」  車のキーを渡すと、与晴は神谷に向き合った。 「……小野君だけどよ、しっかり守ってやってな」  刑事にしては細身すぎる身体が心配になっていたんだろう。  先日、飲んで食べている時も彼はつばさに言っていた、痩せすぎだ、ちゃんと食べてんのかと。 「あの人、ああ見えても俺より遥かに腕っぷしが強いんですよ」 「ガタイとか、腕っぷしじゃない」  どう言うことだろうかと与晴は考えた。 「……刑事にしちゃどう見ても優しすぎんだよ。佐藤君が一番わかってると思うけどよ」  知っている。彼女が優しいという事は。 「……芯は強くても、突然ポキって折れることがある。覚えておきな」  芯が強いことも知っている。  はっきり言って、自分の方が弱い。芯に穴やらヒビやら入っている。  そう思う与晴だったが、人生経験が豊富であろう神谷の話を大人しく聞いた。 「ありがとうございます。相棒として支えていきます」 「じゃあな。ご馳走さん」 「本日は、情報提供いただき、ありがとうございました」  与晴は相棒の待つ車へ戻った。
/332ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加