(04)この道は茨道?

6/11
前へ
/332ページ
次へ
 つばさは顔を洗い、髪型を整え、ネクタイを真っ直ぐに直した。  次に頭を整理する。  班長に結果と状況を伺い、部下には父とのやり取りの詳細を聞いた上で彼に非がなければ謝らなければいけない。  もしも和義がまだ署内にいた場合は挨拶だけに留める。 「よし!」  自分に気合を入れ、勇んで手洗いを出たが出会い頭に男性とぶつかった。 「すみません! 大丈夫ですか!?」  よろけた男性が転ぶのを阻止するため、その腕を咄嗟に掴んだ。 「危ないじゃないか! 転ぶとこだったぞ!」  この聞き慣れた怒鳴り声は間違いない。署長だ。  つばさはすぐに手を離し、とりあえず謝った。 「……申し訳ございません」  途端に署長の態度が嘘みたいにころっと変わった。 「ごめんごめん、小野君。怒鳴って悪かった」 「……お気遣いなく」  逃げるが勝ち。しかし引き留められた。 「例の身元不明遺体の件、佐門署(うち)が死守したから。引き続き頑張ってくれ。期待してるから」  にこやかに肩をぽんと叩かれた。 嫌だがつばさは愛想笑いで答えた。 「ありがとうございます。期待に添えるよう、頑張ります!」  すぐ立ち去ろうとしたが、また止められた。 「小野君、その事件が落ち着いたら、一杯どう?」  死んでも嫌ですー! など言えるわけがない。作ったとびきりの笑顔で答えた。 「はい。都合が合いましたら、是非!」  署長はやけに嬉しそう。ものすごく気味が悪い。 「そっちも楽しみにしてる。頑張って!」 「はい!」  鳥肌がたった。  つばさは班長と井上から本庁とのバトルの経緯と結果を聞いた。  無事自分たちで捜査が継続できること、司法解剖は相変わらず渋られていること、また何か起こったらまた岩井警視正が動くということ…… 「……ということで、岩井警視正のお陰で署長の機嫌がものすごく悪い。署長とはしばらく絶対に顔を合わせるな」  時すでに遅し。 「……すみません。さっき上でガッツリ鉢合わせてしまいました」 「えっ!?」 「機嫌が悪そうには見えませんでした。 ただ、この件落ち着いたら飲みに行こうって誘われて…… 適当に流しましたけど」 「……とにかくしばらく接触するな」  三宅と井上はそれぞれ何やら考えている。 「……はい」  彼らの様子が気になったが、つばさはただ答えた。 「話は変わるが、関口の件だ」  上司二人は昨日、関口の両親と会っている。 「茂山と吉田の提案で、関口のDNAと指紋を取る事にした。 ご両親が提供を承諾してくれたから、鑑識に関口の部屋へ採りに行ってもらっている。西谷は歯型をかかりつけの歯医者に、佐藤はカルテを病院に取りに行っている」  つばさは特に疑問も持たず、その話を聞いて受け止めた。
/332ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加