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彼女の指示で茂山が口を開いた。
「岩井つばさと小野雄翼、指紋は違いますが、DNAは一致します。
よって、鑑定結果は間違いではなく、仏は関口だと考えます。
秋山が関口を薬物実験に使用したのではないかと」
つばさは目眩を覚えてふらついた。隣りの与晴があわてて腕を掴んだ。
「……大丈夫ですか?」
「ありがとう。大丈夫」
与晴はそっと手を離した。
茂山の話はまだ続いた。
「秋山は岩井に飲ませたものより強力な薬の開発を継続しているのではないでしょうか。
しかし結果はあの仏を見る限り失敗……
絞殺痕、遺棄の仕方、目撃者の情報から、衝動的に殺めたのではないかと思います」
和義に渡ったサプリメントによって、自分は最初の実験台になった。
だからこそ経過観察のため、秋山は実家の自分の部屋に空巣し、その後もストーカーのようなことをした。そして関口看護師にも探らせていた。
筋が通る。
あの日見た遺体を思い出した。
女でもあり男でもあった。一歩間違っていたら、自分もあんな姿になっていたかもしれない。
解剖を試みたのか遺体は一部が傷付けられていた。
ひょっとしたら、自分も同じように殺され切り刻まれどこかに捨てられたり、埋められたりしていたかもしれない。
突如、猛烈な吐き気を覚えた。
異変に隣の与晴がすぐに気づいた。
「……大丈夫ですか!?」
つばさは答えず、部屋を飛び出した。
「先輩!!!」
与晴はその後を追った。
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