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(05)焦りは禁物
簡単な朝食を屋上でとりながら、つばさは自分がダウンしていた間に起こったことを改めて二人に共有してもらっていた。
署長に上げたのは、被害者殺害と遺棄に使われたと見える手袋の鑑定結果報告のみ。
「あの仏が関口かもってのは隠したの?」
「調べ直せって言われるだけだろうし、雄翼に繋がると危ないから、玄さん進言で班長決定」
「署長からの指示は?」
「仏の解剖は署長責任で指示が下りました。
また、秋山を遺体遺棄及び遺体損壊容疑で必ず引っ張れと」
「やる気満々じゃん……」
有難迷惑とつばさは思ってしまった。
あんまり首を突っ込まれると身の危険がある。
「でもかなり悩んでるよ。佐門署みたいな所轄じゃ上層部と繋がってるITOUに太刀打ちできないけど、本庁に助けを求めれば、間違いなく揉み消されるって……」
「本庁で助けを乞えるのは、岩井警視正だけです。しかしお二人は仲が悪いので……」
しかし、父政志は敵を助けた。何故だ?
つばさの疑問に茂山が持論を唱えた。
「息子のためだと思う。雄翼に手柄取らせたいっていう親心」
しかし、それは敵に塩を送る意味に等しい。
「オレが手柄あげると天敵が喜ぶだけなんだけどね」
「先輩が高階署長に気に入られてるのは、岩井警視正は想定外のはずです。俺から報告は一切していません」
つばさはボヤいた。
「……ほんとあのおっさん、何考えてんだろ。腹立つわ」
与晴が恐る恐る切り出す。
「……あの、メッセージの着拒を解除してくれと伝言を受け取っています」
和義の件で父に説明を求めたが、無視された。腹が立ったつばさは、母に報告した末に父のメッセージを着信拒否にしていた。
「電話は繋がるんだから、電話しろって言っといて」
ため息を着く与晴を慰める茂山。
つばさは仕事の話を続けた。
「で、秋山はどう引っ張る?」
依然として、会社には『海外出張』と言われている。
目撃情報もない。家にも帰っていない。
ITOUが会社ぐるみで隠しているのかもしれない。
悩む茂山を見て、つばさは小平のことを思い出した。結局都合がつかず会っていなかった。
向こうからも連絡がない所を見ると、あちらも出張で忙しかったのだろう。
「知り合いのジャーナリストが秋山の婚約者とコネあるから、情報もらおうか?」
「……それはさすがに今の状況では危険じゃないですか?」
与晴は心配なようだが、茂山は乗った。
「……頼んでもいい? でも、その方にはくれぐれも無理はしないようにって」
「わかった」
「君たちはやつと接触厳禁だから、後方支援して欲しい。やつが手袋を落とした日の防カメと、目撃情報を引き続き調べてもらえる?」
「了解」
突然スマホの着信音が響いた。
「……あ、俺だ。姉さんから呼び出し。ごめん、行くわ」
「うん。じゃ、悪いけど秋山の件よろしく!」
「任せといて!」
屋上にはつばさと与晴だけになった。
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