(05)焦りは禁物

4/10
前へ
/332ページ
次へ
 仕事に戻ると、まずは防犯カメラの情報収集と確認。  顔認証で絞り込み、気に掛かるものをいくつか残し解像度をあげたところ、二つの映像が見つかった。  車を運転する秋山。車を停めてどこかへ行き三十分もしないうちに走って戻ってくる秋山の姿。  いずれも遺体発見現場で、目撃された日だ。  直ぐに車のナンバーを確認したところレンタカーと判明。情報開示を求め調べたところ、彼が複数回同じレンタカー会社で車を借りた履歴が見つかった。 「これが神谷さんたちに目撃された日で、これが遺体発見日に近い日の記録です。 ちなみに使用した車は、その後2回レンタルされてるようです。既に清掃が入っている恐れが」 「わかった。念の為押さえて、指紋と遺留物残って無いか調べようか」 「わかりました。すぐ手配します」 「お願いね」  つばさは彼にそちらを任せると、エヌシステムにアクセスし、 ナンバーと日付を絞り照会を掛けた。数件ヒット。  位置情報を一つずつ確認すると、家と職場とはかけ離れた場所を往復した記録が見つかった。  それを元に、ITOUのWebサイトを確認し企業情報からITOUが所有する研究室や工場がその辺りに無いか調べてみたが、それらしきものは見つからなかった。    他の可能性を考える。  親戚の家、ITOUの親族の所有する物件、唯梅以外の交際相手……  あまり深く考えすぎて時間を無駄にするのもダメだと途中で切り上げ、 外で捜査中の班員へ情報を共有した。  そこへ相棒がやってきた。 「車を押さえました。澤田さんですが明日は司法解剖の補助で無理なので、班長に相談したところ、岩井警視正に手配いただけることになりました。明日朝一でやってくれるそうなので、立ち会います」 「了解。一緒に行くわ」 「お願いします」  つばさは彼に現状を共有すると、次の仕事に移った。 「このエリアの防カメのデータってある?」 「あー…… そこは無いので、要請しますね。半径1キロ圏内でいいですか?」 「うん。それでお願い」  その日は地味で地道な作業が続いた。
/332ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加