(01)恋の手習い…

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 つばさは与晴と二人でタクシーで寮まで帰った。  手配したのはLOTUS秘書の梅村だった。 「梅村くん別室待機してたんだ……」  彼は会食に参加はしておらず帰ったのかと思っていたが、見送りの時に蓮見社長の傍らにいた。 「蓮見社長が、商談や会食にほとんど同行させてるみたいです」  信用信頼されている証拠だろう。しかし…… 「兼業なのに大変だね……」 「ですよね。でも、苦にはなってないみたいですよ」  確かに彼は社長の隣で生き生きとしていた。  この相棒はどうだ?  菊池には言われた。『すごく充実してるように見える』と。  本当にそうであればいい。  つばさはそれ以上考えるのをやめた。  二人の話題はドラマ協力の話へ。  与晴が前のめりに提案して来た。 「原作、読みませんか?」 つばさは乗った。 「そうだね、読んだ方がいいよね。貸してくれる?」 「わかりました。まず上巻をお持ちしますね」 「お願いします」  そして今見ているドラマの話になった。 「えりなさんの役は、重要なの?」  少し考えて与晴は言った。 「先輩はネタバレ上等派ですか? NG派ですか?」 「そう来るか…… NG派かな」 「わかりました。パッと見関係無さそうなのに、じつは重要だった…… とだけお伝えしておきますね」 「えー。気になる……」  先週までのドラマの感想や考察について話しているうち、タクシーは男子寮へ到着した。  玄関先で腕時計を見たつばさ、深く考えず相棒を誘った。 「録画、今から一緒に見る?」  ちょうど5分前に、ドラマの最新話の放送が終わったところだった。  与晴は笑顔で断った。 「結構です。 こんな夜にお部屋に上がって岩井警視正にバレたら、確実に抹殺されます」  相変わらずクソ真面目だと思いつつ、これ以上誘うとパワハラにもセクハラにもなり兼ねない。 つばさはやめた。 「はいはい。じゃまたね。おやすみ!」 「おやすみなさい!」
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