(02)友

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 今までの事を沙代に話した。  彼女は黙って聞いてくれていたが、 いざ和義との件を話そうとした途端、話の腰を折られた。 「一旦そこまで。ごはん食べてないでしょ?」 「……あ」  時計はもうそろそろ十一時。 「ごめん。わたしが朝から押しかけたからだね……」 「ううん。気にしないで。ちょっと早いけどお昼何か作るわ。待ってて」  腰をあげると沙代も続いた。 「手伝うよ」 「いいから座ってて!」  急いで止めた。  沙代は料理の腕が壊滅的。下手に手伝われると面倒な事になる。  しかし彼女は冷蔵庫を開けた。そして溜息をついた。 「これ彼氏にやられたら引くわ……」  時間があるときに作った常備菜。  炊いたご飯の余りの冷凍保存。  理不尽なつぶやきへし返しした。 「だったら、オレと付き合うのはやめといた方がいいねー」  沙代は膨れた。 「もう!」  余り物と冷凍ご飯で適当にチャーハンを作ったつばさ。 沙代にまた変なことを言われた。 「……料理上手の彼氏も嫌だわ」 「え? なんで? やってくれて、さらに上手だったら良くない?」  上げ膳据え膳の祖父と父親を見て来た。 婿殿故か、出されたものに対して文句を言ったことは一度も見た記憶がないが、 ああいうのは嫌だった。 「そこそこでいいの。 こっちが出来ないと比べてくるし、恩着せがましいこと言ってくるから、そういう人って」 「……そういうものなの?」  経験が無さすぎて分からない。 「そういうもの。和義さんは?」 「……え?」  思い起こそうとしたが、出てこない。 そもそも彼に手料理を出したことが無いし、 作ってもらったことも無いことに気付いた。  どす黒い感情が突如湧き上がった。  ……あの女は彼に手料理を出したんだろうか?  ……あの女に料理を振る舞ったんだろうか? 「……つばさ? どうした?」  顔に出ていたのかもしれない。慌てて押さえつけた。
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