(04)揺らぎ

3/4
前へ
/351ページ
次へ
 茂山は慎重に真面目に茶化さず与晴へ問うた。 「……ちなみに、つばさと一緒にいてなったことは?」 「無かったです。一度も」 「……でも、正直なところ、おって思うことはあったよね?」  遠慮なく切り込むと、与晴も正直に答えた。 「……はい。……俺も男なんで」 「……いつだっけ、胸元ざっくりなドレス着た時。あれすごくなかった?」 「……はい。あれは三度見して西谷に怒られました」  懐かしい話をして二人で笑った。 「でもつばさは気づいてない、と」 「だいぶ男女の機微に疎いですからね」 「だから気づかなかったか…… クズ義の本性に」  冗談交じりに言うと、与晴は真顔で返した。 「和義です」  しかしマジレスのみではなかった。 「クズ通り越してカスですよ。あのクソ野郎……」  語気と目にかなりの迫力が出た。 「君は怒るとヤクザになるから、気をつけな」 「……はい」 「話戻るけど、あれだけ着痩せする(ひと)他に見たことないよ、俺」 「今も着痩せしてますからね。結構筋肉付いたのにあんまり見た目変わらないんで」 「……やはり君はあの筋肉に興奮したのではないかね? つばさと真逆だから」  脱線していた話を強引に元に戻した。 「……違うと思います」 「……じゃあ、ほんとのつばさの裸を妄想して?」 「してません! そりゃ、たまに岩井先輩の姿が見える幻覚と、声が聞こえる幻聴はありましたけど……」  聞き捨てならないことを聞いた茂山は、そこを掘り下げにかかった。 「いつどういう時に見えた? 聞こえた?」 「……俺を心配して声かけてくれた時とか、ですかね。 でもそれで興奮はしてないです」  つばさで興奮せず、雄翼で興奮した、ということだろうか…… 「今のとこ、昨日のサウナだけ?」 「……いえ」 「……どこでどういうときに?」 「……先輩にハグし返された時とか、かわいいって言われた時、やばかったです」 「……は?」  仲が良いとは常々思っていたが、良さの種類が違ってきた気がする。 「……君たちは二人でなにをしてるんだい?」  与晴は俯き、黙ってしまった。
/351ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加