01

1/1
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

01

  真実と事実は必ずしも一致するとは限らない。   もしそれを偶然誰かが想像し、それが後の出来事として偶然発生したことと重なれば   それは「奇跡だ」   そう言われるだろう。   「奇跡」とはそういう   「偶然」の発見なのかもしれない。 ・・・・・✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧・・・・・ 「歩ー!」      「歩ー!」    「歩ー!」 「歩ー!」  「歩ー!」  歓声が聴こえる。その声に爽やかな笑顔で答える青年。その隣には若い女性。二人はドレスアップした姿でレッドカーペットの上を歩いていく。途中ファンにせがまれ、差し出された色紙や写真集にサインしたり、写真撮影にも応じながら二人は壇上に上がった。頭上からもテラス席に待機していた観客からの歓声が降ってくる。司会者に促され、映画で主演を務める青年が先に舞台挨拶する。まずは英語で、次にその国の言語で話し始めると途端、それに歓喜してより一層大きな歓声が沸き起こった。挨拶を終えると次は写真撮影。それも終えると二人は降壇した。去っていく姿を惜しむ声を背中に頭上に、前からも受けながら、二人は会場を去っていく。 「歩ー!」「歩ー!」「歩ー!」「歩ー!」「歩ー!」      歩っっ!!――――――――――――――――――――――――……   ・・・・・✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧・・・・・  白んだ世界が視界中に広がった。 ――誰?  前方に誰かがいる。  おそらく男性。  白い服を着ている。  顔はぼやけていて認識できない。 『あなたは誰?』  そう尋ねようとするが声が出ない。 『え?』  ふいにふわりと白い布が降りてきて、視界が塞がれた。 ・・・・・✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧・・・・・  ――帽子を被った男性の配達員。  何か注文したっけ? とぼんやり考える。オレは玄関にいた。 「都月さま。大変申し訳ないんですが、こちらの箱が少し凹んでしまっているので、中身の方をご確認していただけますでしょうか?」 「はあ……」  オレは言われた通り箱の蓋を開けてみた。  オレンジの、風船? 顔が描いてある。 カボチャ? ハロウィンのパーティグッズみたいだけど、こんなもの注文したっけ? 「あの、これ……」  シュ――――― 「わっ、ちょっと何す……っ!?」  息が……  オレは卒倒した。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!